厳格な環境制約の枠内での開発を 山崎圭一(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院・教授、三ツ沢公園の自然と緑を守る会呼びかけ人)

 大都市でゆたかに暮らす上で、緑(みどり)は欠かせません。横浜市にたくさん緑地が残っているのであれば、少しぐらい削って人工構造物をつくってもよいのですが、国土交通省の資料からとった下図でみるように、高度成長期以来どんどん減ってきて、今や残っている緑はきわめて希少です。1960年~1999年の40年間で約7600ヘクタールの樹林地が横浜市内で消滅しました。約74%の消滅です。もうこれ以上、たとえ1平方メートルでも、横浜市の緑を、そして三ツ沢公園内の緑を減らしたくないと、私は感じています。

三ツ沢公園に残る緑は、とりわけ希少です。というのは、港湾部から離れた、比較的まだ緑地が残っている西部と違い、一番右端の図にみるように、ほとんど緑地が消滅した、港湾に近い東部エリア(または西部と東部の境界域)に残る緑だからです。昔は樹林地がおおかった横浜市では、どんどん市街化を進め、緑地を鉄とコンクリートの人工構造物に置換し続けてきましたが、もう十分ではないでしょうか。鉄とコンクリで投資をつづける工業化の時代は、かなり前に終わっています。

緑を守ることは、「都市の品格」を向上させることにつながります。「都市の品格」のことを「都市格」ともいいます。「都市格」は、第19代大阪府知事を務めた中川登氏(1875年~1964年)が、1925(大正14)年の大阪での講演でテーマにした概念です。その後、大阪ガスの会長で、大阪商工会議所の会頭も務められた大西政文氏が、『都市格について 大阪を考える』(創元社刊)を1995年に刊行されました。人間も、所得水準が全てではなくて、人格が大事で、人格の高い人は結局金儲けも成功するのだと思うのですが、都市もGDPといった経済力だけでなく、「都市格」が大事で、「都市格」を高めれば経済力もついてくるように、感じます。横浜市内の残る緑地を1平方メートルも減らさず、今の緑地水準を厳格に維持しながら、その環境制約の枠内で必要な人工構造物を整備すべきです。サスティナブル・デヴェロップメント(持続可能な開発)の意味は、本来、そういうことです。横浜市内に新規に球技場をつくるな、というつもりは、ありません。市全体としての、かつ各地域コミュニティ内での、厳格な環境制約の枠内でのみ必要な整備を進めるのが、「環境の世紀」といわれる21世紀に見合ったまちづくりだと、私は考えます。

(2023年11月28日)

下図は、「みどりの政策の現状と課題(資料6)」という国土交通省の資料の2頁から、引用しています。出所は以下です:https://www.mlit.go.jp/singikai/infra/city_history/ city_planning/park_green/h18_1/images/shiryou06.pdf

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